ここまで、子どもと一緒に料理をすることを通して、食育に繋げるためにはどうしたらいいのかということについて考えてきました。ただ料理の仕方を教えるのではなく、食に関心を持たせることを狙うのであれば、最終的な目的となるのは料理をすること自体ではありません。

一緒に料理をすることを楽しいと感じることによって、自分もやってみたいと思ったり、作ったものは全部食べようという気持ちになったり、そういう気持ちをお子さんが自然に感じられることが必要です。それが食に対する関心に繋がるため、子どもと一緒に料理をする際に一番大切なのは、料理を楽しむことだと言えるのです。

そこで、難しいものを作るのではなく簡単なものを作ることでできるという自信を持たせたり、気持ちよく料理ができるような言葉掛けを考えたりすることについて見てきたのです。料理は子どもにとってあまり経験する機会が無いものなので、初めてする時にはきっと興味津々で楽しく感じられるはずです。ですが、その時に失敗してしまうと、次にやってみようという気持ちが育ちにくくなってしまいますよね。

そのため、失敗した時には大人がフォローするとか、そういったことも考えておかなければいけません。それから、失敗しないように、最初は大人が手を添えるとか、できるところだけさせるとか、方法を考えることも必要ですね。しかし、大人からすると、子どもと一緒に料理をするよりは、自分一人で作ってしまった方が早いという場面もあるかもしれませんね。

ですが、そう考えてしまうと楽しむことに目が向かなくなるので、子どもと一緒に料理をする時は、子どもの目線に立つことが必要だと言えます。これは、私自身の経験から言えることで、今となってはもっと考えておくべきだったと反省していることでもあります。実際、私も初めて子どもとクッキーを作った時には、あまりにあちこちに粉が散らばるので、もうしたくない、一人でした方が早いと思いました。

それでイライラして、子どもにもこぼさずにしなさいと言ってしまったのですが、よく考えたら小さい子どもが粉を散らさずにできるわけもありませんからね。そこで、しまったと思ったことから、自分が余裕を持つことの大切さを理解できたように思います。

その次は、粉が散らない程度まで自分で生地をまとめてから、最後の仕上げだけさせるようにしました。それから、型を使うのは難しいとわかったので、丸めて押し付けて形を作るだけの簡単なクッキーにしました。そうしたら、初めての時のイライラが嘘のように無くなって、楽しくクッキーを作ることができたのです。

そうなると、その前の時は私にあれこれ言われて嫌そうだった子どもも、最初から最後までにこにこと作っていました。今となっては、いろいろなものを作ることに興味を持っています。そのことから、子どものできること・できないことを自分が理解し、子どもが満足できる形で参加するように考えなければいけなかったのだとあらためて思いました。

作業が難しいものを作ると、大人もそれだけで精いっぱいになり、子どもの事を考える余裕が無くなってしまいます。そうならないために、簡単なものを作るなど方法を考えて、楽しめるようにすることが大切なんですよね。楽しいことは心に残りやすいですし、またやってみたいと思えます。料理を楽しいと思えるように、しっかり心と物の準備をしてから子どもと一緒に料理を楽しみたいものです。